『発明報奨 事前に契約』

日本経済新聞5月1日 1面

武蔵大学 経済学科3年 今井 悠介


[要約]

 政府の知的財産戦略本部(本部長・小泉純一郎首相)が7月にまとめる推進計画の原案が11日明らかになった。 社員が企業相手に発明報奨金の増額を求める裁判が相次いでいることを踏まえ特許法を改正し、 報奨額を企業と社員があらかじめ契約で確定できるようにすることなどが柱。特許の審査期間を現在の3分の1以下に短縮し、 6カ月以内とすることも盛り込んだ。政府は技術開発の促進やゲーム、映画などコンテンツ(情報の内容)産業の活性化を通じ、 経済の国際競争力の回復を目指す「知財立国」構想を打ち出している。推進計画は集中的に改革に取り組むための総合政策で、 21日の戦略本部会合で原案を提示する。

 

[コメント]

現在の特許法では、企業に勤める人が業務の中で発明を行った場合も、発明は社員個人のものだ。 その上で、社員が特許権を企業に譲り、社員が「相当の対価」を得る権利があるとしている. だが現実には、社員が発明を自らの権利として明確に意識しないまま、特許権が会社に帰属するシステムになっている企業が多い。 従ってひと昔前は、発明した社員に与えられるべき対価を支払わない会社 も多かった。 現在は多くの会社が、対価支払いの制度として「発明報奨金」を設けている。

特許法第35条に職務発明規定なるものがある。平たく言えば、利益をあげた発明を生みだした社員に、 会社は発明報奨金を差し出さなければならない、という規定である。これを受けて企業では、職務発明取扱規定を設け、 会社と発明者との取り決めをしているのが一般的である。
ソニーは、報奨金に2000万円以上を出すという。ソニーが改正した報奨制度は、特許、実用新案、意匠の各分野で貢献度の高い発明や 開発を選び、級に応じて報奨金を支給するというもの。その中で特級は、5年間、毎年2000万円以上の報奨金、つまり一億円以上を支払うという。 不景気の中でもソニーは、新商品を次々と開発して、大きな利益をあげているのも納得できる。これは、発明者重視の会社だからである。 ソニーのような大企業といわれる会社も、元は小企業だった。 創業意欲が欠け始めた時に、国は下降になっていく。国は、個人発明家や小企業に夢を与えるような政策を掲げてもらいたいものである。

21世紀に突入した日本ではこれまで以上に知的財産の重要性が問われる。長引く不況を打開する一つの手段として、 企業にかかわらず政府レベルで知的財産の有効な活用方法が模索されなければならない。知的財産の有効活用、 すなわち管理・運用は日本産業の将来への生き残りの第一歩といっても過言ではない。新しい時代に入り、この知的財産の管理・運用に対する考えも、 先に述べたように従来とは変わってきている。例えば、開発した技術を単に特許として出願するだけではなく、正確に評価し公開することによって、 企業価値を高めたり、ライセンス供与への方向性を見出したりする試みや、発明報奨制度を充実させることで従業員の創作意欲を高めようと する試みがなされているが、これらも以前の日本にはなかったビジネスモデルといえる。 しかしながら、法的に十分整備されていない知的財産の管理や、総合的戦略を欠いた知的財産の運用は、大きなリスクを伴うことになりかねない。 自社の技術を盗み出されても財産管理がきちんとなされていなければ、裁判で勝訴することは難しくなる。また、せっかくよい発明が生み出されても、 総合的な評価体制が確立していなければ、利用されないまま埋もれてしまう可能性もある。

大日本製薬などでは新たに2001年、新薬開発に大きく貢献した従業員に対し最高で総額1億円が支給される「発明報奨制度」を 導入した。 これにより、研究員の創薬意欲を喚起し、一層優れた医薬品の創製に邁進している。 新薬開発は個々の研究員の独創的なアイデアと鋭い視線が必要な、個人単位のプロジェクトともいえる。
企業それぞれでの「発明報奨制度」や「報奨金制度」などの取り決めによって、社員は自然と特許など知的所有権を意識して 仕事進めていくことになってくる。 今、企業にもっとも必要なのは厳しい時代に生き抜くための競争力である。「発明報奨制度」や「報奨金制度」などを設け社内メンバーの 士気を高め、企業全体として新たな競争力を磨いていける。このような側面からも、今までとりわけ日本企業に欠けていた「発明報奨制度」や「報奨金制度」 などの充実は社員1人1人だけでなく企業全体として、活性化できる起爆剤になりうるのではないか。

 



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